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発達障害の人が知っておくべき支援制度・サービスまとめ

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発達障害の方の雇用を促進するため、普段の生活の困難を緩和するため、様々な法整備が進んでいます。

「発達障害者支援法」が施行され、発達障害の世間の認知が広がり、発達障害の人もさまざまな支援を受けられるようになりました。

しかし、そうした支援制度やサービスはそれぞれに条件があり、地域によって内容や金銭的負担にも差があります。発達障害の方がどんな支援制度があるのか、またどうやって支援をうけることができるのか、まとまった情報があると嬉しいですよね。

今回は、発達障害者支援法がどういったものかを含め、発達障害のある方にとって生活や就労に役立つ支援制度やサービスについて紹介します。

 

1.発達障害者を支える発達障害者支援法

「発達障害者支援法」とは、発達障害者の社会的支援を目指した法律。2005年にこの法律が施行されるまで、高機能自閉症やアスペルガー症候群、学習障害などは法律上「発達障害」と認められていませんでした。

発達障害者支援法により、こうした知識障害を伴わない発達障害も「支援すべき対象」とされました。

発達障害者支援法が施行されてからのおよそ10年間で発達障害への世間の認識は広がり、それに伴い発達障害者支援法の見直しが求められるようになりました。

そして、補足すべき部分を補うために、2016年に改正。改正後は、発達障害児の早期発見と、幼少期からの適切な発達支援にも目を向けるものとなりました。

発達障害者支援法の内容

発達障害者支援法の目的は、「発達障害への理解の促進」「発達障害者に対する生活全般にわたる支援の促進」です。

まだまだ知られていないかもしれませんが、「発達障害者への支援は医療や保健・福祉・教育・労働のすべての分野において行われる必要がある」とし、「都道府県市町村が責任を持って施行すること」が義務づけられています。

発達障害者支援法に書かれているのは、具体的に以下のようなことです。

  • 乳幼児健診や就学時健診における発達障害の早期発見
  • 特別支援教育体制の推進
  • 放課後児童健全育成事業の利用
  • 特性に応じた適切な就労機会の確保
  • 地域における、自立した生活の支援
  • 発達障害者の権利擁護
  • 専門的な医療機関の確保
  • 専門的知識を有する人材の確保

参考:発達障害者支援法|厚生労働省

発達障害者支援法の基本理念は、発達障害者が適応できないのは周囲の工夫や配慮が足りないためで、社会の責任としてその問題を解決すべきというものです。

この発達障害者支援法によって、支援を受けられる対象範囲が広がり、世間の発達障害に対する認識が高まりました。そして、発達障害者の方が適切な支援や配慮を受けやすい環境になりました。

 

2.発達障害の方が支援を受けるために|障害者手帳制度

発達障害者支援法により支援を受けやすくなったものの、ただ何の準備も無しに簡単に支援を受けられるわけではありません。

障害を持つ方が支援を受けやすくなるために、障害者手帳を取得するとよいでしょう。障害者雇用の枠組みで就職したいときにも必要となります。

ただ、発達障害専用の障害者手帳があるわけではなく、知的障害のある方に『療育手帳』身体に不自由のある方に『身体障害者手帳』精神疾患を有し長期にわたって日常・社会生活に困難を伴う状態の方に『精神障害者保険福祉手帳』が交付されます。

「障害者手帳制度」発達障害情報・支援センター

 

3.発達障害の人が知っておくべき支援制度・サービス

障害年金制度

発達障害の方の生活を支えてくれる制度のひとつに障害年金があります。ただ、単に申請書類を提出すれば支給されるものではなく、日本年金機構の定める一定の基準を満たしている必要があります。

どのような場合に支給されるのか理解し、ポイントをおさえて申請しなければなりません。

障害年金には、「障害基礎年金」「障害厚生(共済)年金」の2つがあります。

申請には医師による診断書、病歴状況申立書などが必要になります。

また、年金の受給には次の3つの条件を満たす必要があります。

・初診時に公的年金制度に加入していること
・加入すべき期間に定められた保険料を納付していること
・障害認定日などに障害を有している状態であること

これらに年齢要件なども加わり、他にも細かな要件設定が必要となりますので、自治体窓口に問い合わせましょう。

申請基準としては、日常生活を送ることがどのくらい困難であるかなど、日常生活・就労・不適応行動などが総合的に判断されるので、障害のレベルや障害等級だけで判断されるものではありません。他にも所得制限の条件があったり、受給できてからも定期的に障害状況確認届の提出を求められることなどもあります。

「障害年金について」日本年金機構

医療制度①自立支援医療制度

精神科や心療内科への通院、精神科デイケアにかかる医療費についての自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。この制度を利用することにより、窓口自己負担が医療費の最大1割で済みます。受給できるのは、通院による精神医療を継続して必要とする場合です。

申請は市区町村の担当窓口で行いますが、条件等を事前に医療機関精神保健センター自治体窓口に問い合わせて確認しておきましょう。

申請に必要なものは、

  • 申請書(自治体ごとのもの)
  • 診断書(申請日から3ヶ月位内に作成されたもの)
  • 受信者の加入する医療保険の保険証
  • 世帯の所得状況等が確認できる書類
  • 印鑑

申請後、精神保健福祉センターでの審査があり、支給認定が通るまでは通常1ヶ月ほどかかります。

「自立支援医療(精神通院医療)について」厚生労働省

 

医療制度②心身障害者医療費助成制度(マル障)

心身に重度の障害がある方が対象の助成制度。医療費の自己負担額の一部を助成します。都道府県や市町村が実施しているもので、精神障害者保健福祉手帳の所持者が対象となっているかどうかは、自治体により異なります。

「心身障害者医療費助成制度」厚生労働省

医療制度③精神科訪問看護

精神疾患の状態の不安定さから、外出が難しく通院での治療が難しい場合や、一人暮らしで身の回りの家事ができない場合、医師の指示のもと、看護師や臨床保健福祉士、作業療法士などの専門スタッフが医療機関や訪問看護ステーションから自宅に訪問して、日常生活への支援や医療面のケアを行う制度です。

利用するには、医師による「訪問看護指示書」が必要となりますので、利用したい場合は診察時に主治医に相談しましょう。

 

就労支援①ハローワーク専門援助窓口

公共の職業紹介支援機関であるハローワークの専門援助窓口では、障害者手帳を持つ人の就労を支援しています。一般相談部門もあり、どちらの部門を利用してもかまいません。

障害の状況や就業適応度合いと照らし合わせ、さらに支援の違いも考慮し、窓口の担当者や支援者らと相談しながら利用しましょう。

ハローワーク専門援助窓口」」厚生労働省職業安定局

就労支援②地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、各都道府県に設置されている就職準備・定着、復職を支援する専門機関です。

就活に入る前に、障害者雇用枠と一般雇用枠のどちらで就活を行うかなどの方向性の相談や、自分の職業適性を調べてもらったり、どう就活に向き合えばよいかなど準備部分をサポートしてもらえます。

相談支援は予約制のため、ハローワークの専門援助窓口を経由して、問い合わせをしてもらい、相談・支援申込を行います。

「地域障害者職業センター」独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労支援③障害者就業・生活支援センター

障害者就労・生活支援センターは、公益法人(社団または財団)や社会福祉法人、特定非営利活動法人(NPO)などが運営しており、障害者の暮らしや仕事について、総合的な支援を行っています。

就職に関する相談、職場では話しにくい仕事上の悩み、お金の管理、健康上の問題などについて、具体的なアドバイスをしてくれます。

「障害者就業・生活支援センター」ATARIMAEプロジェクト

職業訓練①就労移行支援事業所

行政より認可された各種団体・法人が運営する、就労するにあたって必要な知識やスキルを身につけるための訓練を行う事業所です。社会人としての振る舞いや心構えが学べるだけでなく、求人情報に関するアドバイスやマッチング相談なども行っています。

問い合わせ窓口はハローワークとなり、自治体へのサービス受給申請が必要となっています。

受給要件として、就活中であること、就職先が決まればすぐにでも働ける状況にあることが求められ、最大二年間利用できます。また前年度の世帯所得により、利用料の一部について自己負担が発生することがあります。

職業訓練②就労継続支援事業所

こちらも就労継続支援事業所と同じように行政許可された法人が運営している事務所。個人の日常生活で不安定性がある場合や、まだ一般就労の場での労働には難しさがある場合に、必要な訓練を受けることができます。

利用者が運営事業所と雇用契約を結ぶA型と、雇用契約を結ばない形態で利用するB型があります。

詳しくはこちら:就労移行支援事業所・就労継続支援事業所

職業訓練③障害者職業訓練校・障害者職業能力開発校

障害を持った方のために職業訓練を実施しています。国や都道府県、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)らが設置・運営しています。

詳しくはこちら:障害者職業能力開発校

成年後見支援制度

障害の特性上、物事を判断することが苦手な方や社会を理解できない方は、家族などがいなくなると、不利益を被ったり、被害に合ったりする可能性が高いです。

そういったことを防ぐために、法的に選任された支援者が本人に代わって判断したり、一緒に取り決めをしたりする権限を持たせる制度が、成年後見支援制度です。

この制度によって、以下のようなことを本人に代わって行えます。

・金銭管理
・介護・福祉サービスの利用手続き
・契約行為
・財産管理
・不動産処理
・相続手続き など

また、後見人を立てずとも、日常の金銭管理や福祉サービスの利用援助まででしたら、地域の社会福祉協議会に相談し、手伝ってもらう方法もあります。

成年後見支援制度には、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。

任意後見制度

本人の判断能力が十分にあるうちに、将来、判断能力が不十分となった場合に備えて、あらかじめ誰に何を頼みたいか決めておき、公正証書で任意後見契約を締結します。判断能力が十分でなくなった時は、契約の相手方が任意後見人として本人を支援します。

法定後見制度

すでに判断能力が不十分で早急に支援が必要なかたのための制度です。「補助」「保佐」「後見」の3類型があり、実情に応じて家庭裁判所が援助者(補助人・保佐人・成年後見人)を決定します。

成年後見支援センター

成年後見制度の推進機関として、各地域に成年後見支援センターが設置されています。相談受付から市民後見人養成研修、市民後見人の活動支援などを行っています。

成年後見制度に関する相談は、市区町村に設置されている地域包括センターや日本司法支援センター、弁護士会や司法書士会などで相談することも可能です。

詳しくはこちら:「成年後見制度の概要」厚生労働省

地域生活支援事業

都道府県と市区町村それぞれが、日常生活における障害福祉サービスとなる相談支援事業、移動支援事業、地域活動支援事業、成年後見制度など、地域生活支援として独自のサービス事業を実施しています。その中でも相談支援事業については、障害福祉サービスを利用するうえで欠かせない事業となります。

相談支援事業

①障害福祉サービス等の利用計画の作成(計画相談支援・障害児相談支援)

サービス等利用計画についての相談及び作成などの支援が必要と認められる場合に、障害者の自立した生活を支え、障害者の抱える課題の解決や適切なサービス利用に向けて、ケアマネジメントによりきめ細かく支援するものです。

相談窓口は市町村(指定特定相談支援事業者、指定障害児相談支援事業者)になります。

②地域生活への移行に向けた支援(地域移行支援・地域定着支援)

地域移行支援は、入所施設や精神科病院等からの退所・退院にあたって支援を要する者に対し、入所施設や精神科病院等における地域移行の取組と連携しつつ、地域移行に向けた支援を行うものです。

地域定着支援は、入所施設や精神科病院から退所・退院した者、家族との同居から一人暮らしに移行した者、地域生活が不安定な者等に対し、地域生活を継続していくための支援を行うものです。

相談窓口は指定一般相談支援事業者になります。

③一般的な相談をしたい場合(障害者相談支援事業)

障害のある人の福祉に関する様々な問題について、障害のある人等からの相談に応じ、必要な情報の提供、障害福祉サービスの利用支援等を行うほか、権利擁護のために必要な援助も行います。

また、こうした相談支援事業を効果的に実施するために、自立支援協議会を設置し、中立・公平な相談支援事業の実施や地域の関係機関の連携強化、社会資源の開発・改善を推進します。

相談窓口は市町村(又は市町村から委託された指定特定相談支援事業者、指定一般相談支援事業者)になります。

④一般住宅に入居して生活したい場合(住宅入居等支援事業(居住サポート事業))

賃貸契約による一般住宅(公営住宅及び民間の賃貸住宅)への入居を希望しているが、保証人がいないなどの理由により入居が困難な障害のある人に対し、入居に必要な調整等に係る支援や、家主等への相談・助言を通じて地域生活を支援します。

相談窓口は市町村(又は市町村から委託された指定特定相談支援事業者、指定一般相談支援事業者)になります。

⑤障害者本人で障害福祉サービスの利用契約等ができない場合(成年後見制度利用支援事業)

知的障害者や精神障害者のうち判断能力が不十分な人について、障害福祉サービスの利用契約の締結等が適切に行われるようにするため、成年後見制度の利用促進を図ります。

相談窓口は市町村(基幹相談支援センター)になります。

詳しくはこちら:「障害のある人に対する相談支援について」厚生労働省

 

4.発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、都道府県・指定都市に設置され、発達障害児・発達障害者への支援を総合的に行うことを目的とした支援機関。福祉から医療、就労、教育など、広範囲の関係機関と繋がっていて、相談者の状況やニーズに合わせて該当先を紹介してくれます。

また、療育や教育の場での支援の仕方についてのアドバイスもおこなっています。当事者や家族の相談だけでなく、支援機関や教育機関、企業などからの発達障害に関するお問い合わせにも対応しています。

ただ、医療機関ではないので、発達障害の正確な判断、診断はできません。

当事者だけでなく、療育などの相談にも幅広く対応していることから、面談や相談の予約数が多いですので、ご利用したい場合は早めに予約しましょう。

詳しくはこちら:「発達障害者支援センター」発達障害情報・支援センター

 

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。自分にあった支援制度やサービスはありましたか?

本記事の内容のまとめです。

  • 発達障害者支援法」により、発達障害の方が生活しやすい環境が徐々に整ってきている
  • 障害を持つ方が支援を受けやすくなるためには、障害者手帳を取得するとよい
  • 発達障害の方が知っておくと良い支援制度やサービスはたくさんあり、自分に合ったものを探してみるとよい
  • 発達障害者支援センター」では相談者の状況やニーズに合わせて該当先を紹介してくれる

発達障害のある方を支援するしくみや制度は、ここ何年かの間に徐々に準備されてきていますが、まだまだ途中の段階であり必ずしもわかりやすく体系だっているしくみや制度ばかりではありません。

利用するとよい支援・サービスはたくさんあるかと思いますが、支援を受けられる対象となるかどうかの認定がされることが必要だったり、利用できる場合でもその範囲に上限が設定されていたり、支援サービスがお住まいの地域では必ずしもすべて設置されていなかったりするケースもまだまだあります。

ですので、どんな支援が必要かを十分検討の上、お住まいの地域の福祉課などの窓口や、発達障害者支援センターに相談してみてはいかがでしょうか。

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