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ADHD(注意欠陥・多動性障害)の原因は?治療方法はあるの?病院はどこにいけばいいの?

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発達障害の一つ、ADHD(注意欠陥・多動性障害)。最近ではやっと世間の認知も広がってきましたが、まだまだ詳しく理解はされていないでしょう。

では、ADHDはどういった特徴があり、発症の原因や発症時期、治療方法はどのようなものがあるのでしょうか。

 

1.ADHD(注意欠陥・多動性障害)の主な症状・特徴

ADHDの主な症状は「不注意」、「多動性」、「衝動性」で、こうした症状が学校と家庭など、少なくとも2つ以上の状況であらわれます。大人のADHDでも主な症状は同じです。

子どもの場合は「ルールや決まりを忘れてしまう」、「思いついたことをすぐ発言してしまう」などといったような機能障害があらわれたり、「目的ある行動のための動機づけが困難」、「興味があることでないと行動できない」などのように未来のために何かを頑張るということができず、今を楽しむことを追求します。

大人の場合ですと、仕事場で「物事を先送りにしてしまい、仕事に取り掛かれない」、「約束や責務を果たせない」、「うまく計画や準備をすることができない」などの"仕事ができない"ととられるような症状としてあらわれます。

詳しくはこちらのページをご覧ください:
ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?症状・特徴・診断法・治療法まとめ

 

2.ADHDの原因は?

ADHDの原因については、まだ完全には解明されていませんが、脳の機能の不具合によって引き起こされることがわかってきています。しかし、なぜ脳に不具合が起きるのかは不明な点が多いです。

家庭環境やしつけは原因ではない?

かつては発達障害の原因がよくわかっていなかったので家庭環境や親の愛情不足の問題だと言われてきました。

しかしその後の研究によって、発達障害は脳の機能の不具合から起こる生まれつきの障害であり、家庭環境やしつけの問題ではないことがわかってきました。

ADHDの原因は生まれつきの脳の機能障害

ADHD発症の原因として現在有力だとされているものは、「脳の前頭野部分の機能異常」です。

近年の研究から、ADHDの人は、行動等をコントロールしている神経系に機能異常があるのではないか、前頭葉の前頭前野の働きが弱いため、自分の行動・感情がうまくコントロールできなくなるのではと考えられています。

少し難しい説明となってしまいますが、ADHDの人に異常があると考えられている「前頭葉」が働くためには、神経伝達物質のドーパミンがニューロンによって運ばれなくてはいけません。しかしADHDの人の場合、ニューロンによってドーパミンをうまく運ぶことができず、それにより前頭葉の働きが弱くなってしまうと考えられています。

それが原因で、「多動」、「衝動」、「不注意」の3つの特徴が現れます。

ADHDの人は五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまう傾向がありますが、それも前頭葉の働きが弱いからだと言われています。

思考よりも五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまい感覚を過剰に感じてしまうので、論理的に考えたり集中するのが苦手となる傾向があります。

また、最近の研究では、遺伝的な要因とともに、胎児期・発育期の環境的要因も相互に影響を及ぼす言われています。様々な関連の可能性について、現在研究が進められていますが、まだはっきりとした因果関係については結論は出ていません。

 

3.ADHDの発症時期は?

ADHDの発症時期は明確にはわかっておりません。一人ひとり発症時期は異なり、また生きていく中で何らかの困難に直面したり、症状になんとなく気がついてから診断を受けることがほとんどであるので、いつ発症したかは明確にはわからないのです。

しかし、一般論としてですが、生後すぐには症状の確認をすることはできないにしても2歳ごろから少しずつ症状がみられるようになると言われています。

そして、3〜4歳頃に自律することを覚え、社会のルールというものをなんとなくわかり始める頃に"多動性"の症状が目立つようになり、小学校に上がる7歳くらいになると、顕著に症状が見られ、より目立ってくるので確定診断が下される子が多くなります。

また、大人になってからADHDの確定診断を下される人もいます。

詳しくはこちらのページをご覧ください:
ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?症状・特徴・診断法・治療法まとめ

 

4.ADHDが遺伝する可能性は?

前述の通り、ADHDは脳の機能障害が原因であると考えられおり、その脳の機能障害には、遺伝的要因が関連するという研究結果も出ています。

親からの遺伝が原因となる可能性を確率で表すことはできませんが、ゼロとは言い切れないと考えられています。

 

5.ADHDの治療方法

現在の医学では、薬や手術などでADHDを完全に治療することはできません。しかし、ADHDによる困難の乗り越え方を学ぶ教育・療育や、ADHDの特徴を緩和する治療薬は存在します。

また完治させることはできないにしても、普段からの対応法を考えることによって、本人が生きやすい環境を作ることもできます。

子どものADHDの場合の治療法

子どものADHDの特徴を緩和させるためには、場合によっては投薬を行うこともありますが、まずは「教育・療育の支援」を行うことが一般的です。

教育・療育支援は、子どもの周りの環境を整えたり、本人がその場に適した行動などを学ぶソーシャルスキルトレーニングを学んだり、親が具体的な対処法を学んだり(ペアレント・トレーニング)することによって自分の特性を理解して、感情や行動をコントロールできるようにするものです。

環境調整
この環境は、教育現場における物理的な環境のことです。例えば、集中することが難しい子の場合は、その子の机の周りに無駄な刺激物を置かないようにするなど教室の環境を調整します。

ソーシャルスキルトレーニング
通称「SST」。様々な特性を持つ本人が社会や生活において適切に行動できるようにロールプレイなどを行いトレーニングします。紙芝居や遊びを用いたシミュレーションなどを行います。

ペアレントトレーニング
「ペアレントトレーニング」とは、保護者が子どもに対して療育的な訓練を行えるようになるよう親向けにトレーニングをすることです。注意の仕方、アドバイスの仕方、褒め方などを学びます。

このような療育は、発達障害専門の病院や公立・民間の児童発達支援事業所などで学ぶことができます。このような場所に通うことによって、本人の良い部分を磨いていくことができます。

薬物療法
近年、脳内の神経伝達物質の、ノルアドレナリン再取り込みを阻止する薬のストラテラ(アトモキセチン)と中枢神経を刺激するコンサータ(塩酸メチルフェニデート徐放剤)が認可され、薬物療法が行われることもありますが、人によっては副作用が出ることがあります。多用するのは避け、必ず医師とよく相談した上で適切な量を使い、最低限の利用にするようにしましょう。

また、ただ薬を利用して子どもを落ち着かせるのでははく、落ち着いている時には必ずスキルトレーニングなどを行いましょう。

大人のADHDの場合の治療法

大人のADHDの治療法としては、主に心理社会的アプローチ薬物療法の2つがあります。

心理社会的アプローチは、周りの環境を整える環境調整や、暮らし、生活環境や人間関係などの見直しなどを行います。子どものADHD治療のひとつのペアレント・トレーニングの考え方を応用をすることで周りの人に気をつけて欲しいことなどを伝えることができます。

薬物療法は大人の場合でも、子どもの場合と同様にストラテラ(アトモキセチン)とコンサータ(塩酸メチルフェニデート徐放剤)を使っていることが多いです。この薬物療法にはやはり食欲不振などの副作用があるので、医師と相談の上、必ず用法・用量を守って使用しましょう。

ADHDの治療で大切なこと

ADHDの治療で大切なことは「目標をきちんと立て、それを忘れないこと」です。

だいたいの人に共通する目標とは、職場や家庭で自信を取り戻すことができ、障害を抱えていたとしても自分の特性としてそれを認められること。また、それによって充実した社会生活がおくれるようになることです。

これを達成するためのポイントとしては、生活しづらくなっている困難な状況を理解することができ、対処するための方法を身に着けることが大切です。

また、一人でなんとかしようと思っても悪循環に陥るだけなので、職場の人たちや家庭の人たちなど周囲の人間が良き理解者となることも重要です。

 

6.様々な医療機関で受けられるADHDの診療

ADHDは、大人の場合だと精神神経科や精神科、心療内科、メンタルクリニックなどの医療機関で診療を受けることができます。子供のADHDは小児科や児童精神科で診てくれます。

しかし、いきなり医療機関を受診するのは少し不安、抵抗があるという方は多いかと思います。そのような方は、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用することをおすすめします。

早めに相談して、よりADHDに対して正しい知識を得るのは重要です。

家族で試行錯誤をして対処法を見つけていくよりも、専門機関に相談し色々な方法を教えてもらった方が、時間もかかりませんし、ストレスも少なくすむ可能性は高いでしょう。必要であれば医療機関を紹介してもらうこともできます。

子どもか大人かによって行く機関に違いがありますので、以下を参考にしてみてください。

【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
など

【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所
など

 

7.まとめ

いかがでしたでしょうか。本記事では、ADHDの発症の原因や発症時期、治療方法をまとめました。

  • ADHDの主な症状は「不注意」、「多動性」、「衝動性」
  • ADHDの原因についてははっきりとは分かっていないが、有力説は「脳の前頭野部分の機能異常」家庭環境やしつけの問題ではない
  • ADHDの発症時期は明確にはわかっていない
  • ADHDが親からの遺伝する可能性はゼロとは言い切れない
  • 薬や手術などでADHDを完全に治療することはできないが、困難の乗り越え方を学ぶ教育・療育や、ADHDの特徴を緩和する治療薬は存在する
  • 治療で大切なことは、目標を持つこと・職場や家庭の人たちが良き理解者となること
  • ADHDは、大人の場合だと精神神経科や精神科、心療内科、メンタルクリニックなどの医療機関子供のADHDの場合は小児科や児童精神科などで診てもらえる

ADHDは発症の原因・時期が明確にはわかっておらず、まだ完全に治療することもできませんが、困難の乗り越え方を学ぶ教育・療育や、症状を緩和する治療薬は存在します。また、治療する中で、職場や家族などの周りの人間が良き理解者となることが大切です。

まずは専門機関に相談して、適切な対処を受けられるようにしましょう。

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