自閉症スペクトラム障害(ASD)は、いくつかの自閉症状のある障害が統合されてできた診断名で、コミュニケーションに困難さがあり、同じ行動をしたり、反復行動などが症状として起こります。
本記事では、自閉症スペクトラム障害はどういった特徴があり、発症の原因や治療方法などはどのようなものなのか、ご説明していきます。
1.自閉症スペクトラム障害(ASD)の主な症状・特徴
自閉症スペクトラム障害には、「社会的コミュニケーションおよび対人交流の困難」と「行動、興味が限定されて反復的」の特徴的な2つの症状があり、また知的障害を伴う場合と伴わない場合があります。
詳しくはこちらのページをご覧ください:
自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?症状・特徴・診断基準・治療法まとめ
2.自閉症スペクトラム障害(ASD)の原因は?
自閉症スペクトラム障害については、これまでのところ確実にそれと断定されている原因はありません。しかし、先天的な脳の機能異常により引き起こされていると考えられています。これまでの研究結果からは、しつけや愛情不足といった親の育て方が直接の原因ではなく、遺伝的な要素が発症に関与しているのでは、と推定されています。
何らかの生まれつきの遺伝要因に様々な環境的な要因が重なり、相互に影響しあって脳機能の障害が発現するのではないかという説が現在有力とされています。
さらに、自閉症スペクトラム障害になりやすい体質を持って産まれている子どももいると推定されていますが、何がきっかけとなって実際に自閉スペクトラムを呈しているかはいまだ不明です。
何らかの生まれつきの遺伝要因に様々な環境的な要因が重なり、それらが相互に影響しあって脳機能の障害が発現するのではないかという説が現在有力とされています。
3.自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症時期と年齢ごとの特徴
自閉症スペクトラム障害の症状は、生後2年目までの間に気づかれることが多いとされ、もちろん人によって症状の重さに違いがありますので、症状が軽い場合は生後2年目以降に気づかれることもあります。
一般には、小児期後期(15歳頃)には特徴が顕著となり、思春期には一部の症状は改善していくとされていますが、成人期になって初めて診断される場合もあります。
自閉症スペクトラム障害の症状は人によって個人差が大きいのですが、成長とともに変化していくもので、年齢ごとの異なる症状が見られます。
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自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?症状・特徴・診断基準・治療法まとめ
4.自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療方法
自閉症スペクトラム障害の根本的な治療法や手術はいまだ確立していません。
しかし、早期からの療育や環境調整などを行うことで症状を緩和したり困りごとを軽減することができます。教育・療育によるアプローチで本人が困難への対応法を学んだり、保護者や家族が困難を未然に防ぐためのフォローなどを学び、お互いに生きやすい環境をつくっていくことが可能です。
治療の基本は療育
治療の基本は療育です。一人ひとりの子どもの状態や特性に合わせた療育のプログラムは、本人の力を引き出してできることを少しずつ増やし、生活上の困難を減らす助けになります。
療育によって本人が適切な支援を受け、同時に周囲が本人の特性について十分理解できるようになると、子どもは生活上の支障を感じにくくなり、自己肯定感が高まって二次障害の予防にもつながります。
また、療育には「集団療育」と「個別療育」があります。
集団療育は少人数のグループでゲームをしたり、遊んだりすることにより、集団活動の中でのルールや、コミュニケーション力、社会性を身につけることができます。個別療育は子どもと専門スタッフが1対1なので、一人ひとりの発達段階やニーズなどに合わせた指導を自分のペースで受けることができます。
療育の利用開始前に専門スタッフとよく相談して、その子にとって学びやすい療育を選ぶことが大切です。
療育は地域の療育センターなどの公的な施設のほか、病院やクリニックなどに併設された施設、民間の施設でも行われます。児童発達支援センターや児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所で受けることができます。
家族の支援プログラム
自閉症スペクトラム障害の子どもを持つ家族の支援プログラムには、「ペアレントトレーニング」や「ピア・カウンセリング」「ピアサポート」、「メンタリング」などがあります。これらの支援プログラムは、発達障害者支援センターや教育センターなどの行政機関、病院やクリニックなどの医療機関のほか、民間の支援団体などでも実施されています。
薬物療法
自閉症スペクトラム障害やてんかん等の合併症を緩和させる目的で薬が処方されることがあります。薬の服用により特徴が緩和されている時には療育や教育の効果も上がりやすくなるとも言われています。
しかし、薬物療法は医師の指示のもと、用法や用量を守って服用していかなくてはいけません。薬に頼り切って多用してしまうようなことは避けましょう。
5.自閉症スペクトラム障害(ASD)の診療・相談はどこでできるの?
自閉症スペクトラム障害の傾向があるかも?と思っても、いきなり医療機関を受診するのはハードルが高いと感じる人も多いのではないでしょうか。
しかし、適切なサポートを受けなければ、本人にも周囲の人たちにも負担をかけてしまいがちです。自閉症スペクトラム障害の対人関係のトラブルなどは、障害への理解がない状態ではなかなか修復が難しかったり、本人が自分を責めてしまったりなど、状況が悪化してしまう場合もあります。
専門機関への相談を事前に行うことで、状況が悪化してしまうようなことが起こらないようにできる限りのサポートを受けることができるかもしれません。
もしいきなりの医療機関に抵抗がある場合は、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのよいでしょう。早めに相談し、自閉症スペクトラム障害に対して正しい知識を得るのは重要です。
家族で試行錯誤をして対処法を見つけていくよりも、専門機関に相談し色々な方法を教えてもらった方が、時間もかかりませんし、ストレスも少なくすみます。必要であれば医療機関を紹介してもらうこともできます。
子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。
【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所 など
【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所 など
身近な相談センターに行って相談し、そこから専門医を紹介してもらえます。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談に乗ってもらえます。
自閉症スペクトラム障害を含む発達障害の専門の医療機関は他の病気に比べるとまだ少ないのですが、発達障害者総合支援法などの施行によって、年々増加しています。
医療機関での診断は、子どもの場合は、専門外来のある小児科、脳神経小児科、児童精神科などで行われることが多いです。
18歳以上の場合は精神科や心療内科などで診断できます。また、保健センターなどでは知能検査や適応能力を診断する検査を受けられるところもあります。
6.自閉症スペクトラム障害(ASD)の子をサポート・支援をする上で大切なこと
自閉症スペクトラム障害は、特有の発達過程・スタイルがあることを理解しながらサポートしていくことが大切です。
例えば、1歳頃になったら〇〇を教えてみましょうという記事を目にしたときに、「1歳までに〇〇ができるようにさせなければいけない」と思い込み、それをノルマとしてしまうと、「うちの子は周りができているのに…」と、発達の遅れや言動への困難さに悩んでしまうでしょう。
しかし、自閉症スペクトラム障害特有の発達過程・スタイルがあるので、発達の遅れや言動への困難さに悩まずにサポートする側が障害を正しく理解することが大切です。本人に合わせた課題を設定するようにできるとよいでしょう。
7.まとめ
本記事では、自閉症スペクトラム障害はどういった特徴があり、発症の原因や発症時期、治療方法はどのようなものがあるのかをまとめました。
- 自閉症スペクトラム障害の特徴的な2つの症状は「社会的コミュニケーション・対人交流の困難」と「行動、興味、または活動の限定された反復的な様式」
- 自閉症スペクトラム障害の原因についてははっきりとは分かっていないが、有力説は生まれつきの脳機能障害で家庭環境やしつけの問題ではない
- 自閉症スペクトラム障害の発症時期は明確にはわかっていないが、生後2年目までに気づかれることが多い
- 自閉症スペクトラム障害の症状は成長とともに変化していく
- 薬や手術などで自閉症スペクトラム障害を完全に治療することはできないが、困難の乗り越え方を学ぶ教育・療育や周囲の支援、薬物療法によって、緩和したり困りごとを軽減することはできる
- 子どもの場合と大人の場合で診療する医療機関は違う
- いきなりの医療機関に抵抗がある場合は身近な相談センターに行くと良い
- 支援・サポートする上で大切なことは、自閉症スペクトラム障害特有の発達過程・スタイルがあることを理解すること
自閉症スペクトラム障害は、原因や発症時期に関して明確にはわかっておりません。そして年齢やその時の状況によって変化する場合があります。ですので、周囲の方はその時々の本人の状態に合わせて接していくことが大切です。
自閉症スペクトラム障害はその発達過程やスタイルが特有なものであることも理解していただけたらと思います。それぞれの成長に合わせて、それぞれのライフステージに応じた支援を途切れることなく継続することです。
そして、自閉症スペクトラム障害を完全に治療することはできませんが、困難の乗り越え方を学ぶ教育・療育や周囲の支援、薬物療法によって、緩和したり軽減することはできます。身近な相談センターに行って相談し、適切な対応・治療を受けられるようにしましょう。