ADHD(注意欠陥・多動性障害)は不注意、多動性、衝動性の3つの特徴がある発達障害。最近では発達障害の認識も浸透しつつあり、子どもや自分がADHDなのか気になる方も多くなってきている傾向にあります。
今回は、ADHDの特徴や専門機関での診断基準、検査内容についてまとめました。
1.ADHD(注意欠陥・多動性障害)の主な症状・特徴
ADHDの主な症状は「不注意」、「多動性」、「衝動性」で、こうした症状が学校と家庭など、少なくとも2つ以上の状況であらわれます。大人のADHDでも主な症状は同じです。
子どもの場合は、「ルールや決まりを忘れてしまう」、「思いついたことをすぐ発言してしまう」などといったような機能障害があらわれたり、未来のために目的を持って何かを頑張るということができず、今を楽しむことを追求します。
大人の場合ですと、「物事を先送りにしてしまい、仕事に取り掛かれない」、「うまく計画や準備をすることができない」などの"仕事ができない"ととられるような症状としてあらわれます。
詳しくはこちらのページをご覧ください:
ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?症状・特徴・診断法・治療法まとめ
2.ADHDの診断時期・年齢は?
ADHDは一人ひとり発症時期は異なり、また生きていく中で何らかの困難に直面したり、症状になんとなく気がついてから診断を受けることがほとんどであるので、いつ発症したかは明確にはわかりません。
しかし、生後すぐには症状の確認をすることはできないにしても2歳ごろから少しずつ症状がみられるようになると一般的には言われています。
そして、3〜4歳頃に自律することを覚え、社会のルールというものをなんとなくわかり始める頃に"多動性"の症状が目立つようになり、小学校に上がる7歳くらいになると、顕著に症状が見られ、より目立ってくるので確定診断が下される子が多くなります。また、大人になってからADHDの確定診断を下される人もいます。
詳しくはこちらのページをご覧ください:
ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?症状・特徴・診断法・治療法まとめ
3.医療機関のADHDの診断基準
ADHDの診断基準(特徴チェック)
ADHDの診断は主に、アメリカ精神医学会の診断基準『DSM-5』を用いて専門医によって行われます。
また、簡単なチェックテストだけで行われるものではなく、本人への面談や検査、子どもの場合には家族からの情報提供などによって総合的に診断がされます。
しかし、他の神経発達症や自閉症スペクトラム障害との区別や併存があるかどうかの判断が非常に難しく、1回だけの受診で確定診断がされることはありません。専門家が何度か問診・検査を重ね、時間をかけて慎重に診断を行います。
参考として、アメリカ精神医学会の診断基準『DSM-5』におけるADHDの診断基準をご紹介します。ただし、ADHDの正式な診断は医療機関での受診が必要なので自己判断は避けましょう。
ADHDの疑いを感じたり、気になることがあれば、専門機関への相談や医療機関の受診をするようにしましょう。
DSM-5における注意欠如・多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の診断基準
A1:以下の不注意症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。a.細やかな注意ができず、ケアレスミスをしやすい。
b.注意を持続することが困難。
c.上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える。
d.指示に従えず、宿題などの課題が果たせない。
e.課題や活動を整理することができない。
f.精神的努力の持続が必要な課題を嫌う。
g.課題や活動に必要なものを忘れがちである。
h.外部からの刺激で注意散漫となりやすい。
i.日々の活動を忘れがちである。A2:以下の多動性/衝動性の症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。
a.着席中に、手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする。
b.着席が期待されている場面で離席する。
c.不適切な状況で走り回ったりよじ登ったりする。
d.静かに遊んだり余暇を過ごすことができない。
e.衝動に駆られて突き動かされるような感じがして、じっとしていることができない。
f.しゃべりすぎる。
g.質問が終わる前にうっかり答え始める。
h.順番待ちが苦手である。
i.他の人の邪魔をしたり、割り込んだりする。B:不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかは12歳までに存在していた。
C:不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかは2つ以上の環境(家庭・学校・職場・社交場面など)で存在している。
D:症状が社会・学業・職業機能を損ねている明らかな証拠がある。
E:統合失調症や他の精神障害の経過で生じたのではなく、それらで説明することもできない
出典:http://www.e-club.jp/adhd/adhd_basic/7999.html
4.専門医療機関でのADHDの診断
受診をする基準
発達障害ではなく定型発達の子どもの場合でも2~3歳頃までは、じっとしていることは難しく、集中力も長くは続かない子どもが多いと言えます。このことから、4~5歳児ぐらいから診断を受けることが多くなってきます。多動性が目立ち、言葉の遅れ、不器用などの特性が明らかになり、また集団の中で問題行動が目立ってくるからです。
子どもの場合は、受診をする基準としては以下のようなものがあることから日常生活に支障をきたし、本人が困難や生きづらさを感じているかどうかです。
・同じ世代の子どもと比べて著しく不注意・多動性・衝動性の症状がある
・友達とのトラブルを起こしやすい
・学力の低下が著しい
など
大人の場合は、「日常から生活をする上でADHDの症状と似たようなことで色々と支障をきたし、日常生活や仕事が困難で、どうにか解決したいが自分ひとりではどうにもならない」という状況が受診の基準になります。
ADHDの人は、定型発達の人が思っている以上に、日常生活や学校・職場などの色々な場面で困難を抱え悩んでいることが多くあります。
しかし、適切なサポートや治療を受けることができれば、本人の特性を理解して、本人や周りが困っていることの悪循環から抜け出し、能力を伸ばしていくことができます。
そのためにも、ADHDを疑ったら専門機関へ相談し、早い時期に専門医の診断を受け、適切なサポートや治療を受けることがADHDの人にとってはとても大切になります。
自己判断をせずに専門機関で相談を
自分が悩んでいるのはADHDかもしれないという疑いを解決したいという方や、いきなり専門医に行くことは自分はちょっと…という方は、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用することをがおすすめします。
身近な専門機関と言っても、子どもか大人かによって行く機関に違いがありますので、以下を参考にしてみてください。
【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
など
【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所
など
身近な専門機関の相談窓口で相談後、医療機関に行く必要があるとわかった場合は、上記の専門機関で紹介してくれる医療機関に行き医師からの診断を受けましょう。
診断を受けてADHDだった場合は今後どのように対応していけばいいか聞くことができますし、仮にADHDでなくとも自身の普段の行動を見直すきっかけになると思います。
ADHDの診断が受けられる医療機関
ADHDの診断は、子どもの場合、小児科・児童精神科・小児神経科や発達外来などで受けることができます。
(上記の医療機関は、大学病院や総合病院などにあります)
大人になって検査・診断を初めて受ける場合には、精神科や心療内科、大人もみてくれる児童精神科・小児神経科や精神科など専門の医療機関を受診することが一般的になります。
5.ADHDの診断・検査の流れ
診断・検査の流れ
【子どもの場合】
ADHDの診断は医師の問診がメインになっています。直接問診で本人が自宅や学校でどのような日常を送っているのかを詳しく聞き取ったり、本人の様子を見たりして症状や特性を判断します。
また、面談の時にこれまでの生育歴・既往歴・家族歴などの聞きとりも行います。子どものことを医師が正確に知るために、親や担任にチェックリストを記入してもらうこともあります。
それ以外にも心理テストや知能テストを行い、総合的に判断します。
【大人の場合】
大人の場合には、医師の問診でまず現状の確認をします。この時に日常的に困っていること、普段の生活の様子、得意なことや他の病院にかかっているかどうかを伝えるようにします。
次に子どもの頃の様子、家族から見た印象やこれまでの病歴などについてなど、これまでの経緯を聞かれます。そして心理検査・生理学的検査などが行われます。このような流れで、ひとまずの診断が下されます。
以上がADHDの診断の流れになります。前述のように1回の受診で確定診断が下されるようなことはありません。ADHDの診断は、時間をかけて慎重に下されます。
診断・検査に必要な物
受診する医療機関によっても変わりますので、持ち物や準備については予約時にしっかりと確認するようにしましょう。
日常生活での行動や様子も大きな診断の要素になります。専門機関を受診する前に、ADHDの特徴を本人がどの程度持っているか、本人の状態を把握しておくことも大切です。資料として役立つことがあるので、日常生活での行動や様子の具体的なメモを持参するとよいでしょう。
【子どもの場合】
・母子手帳
・保育園や幼稚園時の連絡帳
・通知表
・子どもの自筆のノート など
【大人の場合】
・小学校の通知表など子どもの頃の様子が分かるもの など
6.まとめ
いかがでしたか。本記事では、ADHDの特徴や専門機関での診断基準や検査内容についてまとめました。
- ADHDの主な症状は「不注意」、「多動性」、「衝動性」
- ADHDの症状は、2歳ごろから少しずつ顕著に見られるようになる
- ADHDの特徴が正確に認識されるのは小学校就学の頃(7歳ごろ)
- ADHDの診断は主に、アメリカ精神医学会の診断基準『DSM-5』を用いて専門医によって行われる
- ADHDの正式な診断は医療機関での受診が必要なので自己判断は避けること
- 子どもの場合は、受診をする基準としてはADHDの症状が見られ、それによって日常生活に支障をきたし、本人が困難や生きづらさを感じているかどうか
- 大人の場合の受診の基準は、「日常から生活をする上でADHDの症状と似たようなことで色々と支障をきたし、日常生活や仕事が困難で、どうにか解決したいが自分ひとりではどうにもならない」という状況
- ADHDの疑いがある場合は、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するとよい
- 子どもの場合のADHDの診断は、小児科・児童精神科・小児神経科や発達外来など
- 大人になって検査・診断を初めて受ける場合は、精神科や心療内科、大人もみてくれる児童精神科・小児神経科や精神科など
- ADHDの診断は、医師の問診、心理テストやさまざまな検査を通して、時間をかけて慎重に下される
- 診断・検査に必要な持ち物や準備は、受診する医療機関によって変わるので予約時に確認すること
ADHDは診断基準が設けられているものの、判断が難しい障害なので必ず専門医に相談して診断を受けましょう。ADHDの人が診断を受ける最大のメリットは、周りからの理解や適切なサポート・治療を得られるようになり、これまで本人が抱えていた困難を好転できるようになることです。
診断を受けたら、周りの人はADHDの人に対しての正しい知識と理解をし、本人にとって困難なことや生きづらさといったことがどうすれば軽減されるのかを一緒に考えるようにしましょう。