突然胸が苦しくなり、鼓動が早くなり、大量に冷や汗をかき、「死んでしまうかも…。」と不安に襲われながら救急車で病院に運び込まれるけれども、どこを調べても体には異常はなく、そのうちに、あれほど苦しかった症状がスッと消えている。そんな発作を何度も繰り返し不安が募る…。これはパニック障害です。
突然、動悸やめまい、発汗、手足の震えなどの発作を起こして、そのために生活にも支障が出てます。
心臓や胃などに異常がなく、検査しても内科的な異常が見つからなかったりするので、周囲からは理解してもらえないといった状況にもなりがちな病気です。本当はとても痛くて苦しくて不安なのに、誰からも理解されないことはつらいことですよね。
本記事では、そのパニック障害の詳しい症状や原因、診断や治療法についてご説明していきます。
1.パニック障害とは?
パニック障害は、「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」を三大症状とする病気です。およそ100人に1人が発症するといわれています。
突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作を起こし、そのために生活に支障が出ている状態です。
このパニック発作は、死んでしまうのではないかと思うほど強くて、自分ではコントロールできないと感じます。そのため、また発作が起きたらどうしようかと不安になり、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになります。
とくに、電車やエレベーターの中など閉じられた空間では、逃げられない!と感じてパニックを起こしてしまい、それがトラウマとなって外出ができなくなってしまうことがあります。
パニック障害では薬による治療とあわせて、少しずつ苦手なことに慣れていく心理療法が行われます。
また、パニック障害は、神経質で繊細で、もともと不安や恐怖心が強い人がなりやすいと言われています。また、人の気持ちを先回りして、「こんなことをすると、他人に迷惑をかけてしまう」などと、自分よりも他人を重視するやさしい人が多く、どうにもならなくなって、人との接触を避けて、対人恐怖やうつ病になってしまうことも多いのです。
2.パニック障害の原因は?
パニック障害のメカニズムや原因については、まだ完全には明らかにされていません。しかし、私たちが危険な場面に遭遇したときにはたらく神経機能が異常をきたすとパニック障害が生じると考えられています。
また、家族歴があると発症リスクが高まることが報告されています。家系的に問題がない場合でも、例えば幼少期に親と離別したり、孤独感を感じたり、虐待を受けたり、幼児教育や受験勉強などで強いストレスやプレッシャーを経験し、パニック障害に陥ることもあるそうです。こういったストレスやプレッシャー以外にも、過労、睡眠不足、風邪などもパニック発作のきっかけになるといいます。
3.パニック障害の主な3つの症状
パニック障害は、主な3つの症状である「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」と、そこから二次障害的に発症する「うつ症状」が特徴的です。
パニック発作
パニック発作は、何の前触れもなく突然生じて、激しい動悸、息苦しさ、めまいなどの症状を起こす発作です。パニック発作による症状は「自分は死んでしまうのではないか」と思うほどであり、患者さんが病院に駆け込むことも少なくありません。予期しないタイミングでパニック発作は起きるので、寝ている時に発作が起きることもあります。
また、パニック発作はパニック障害でなくてもみられます。たとえば、閉所恐怖症の人が狭い場所に閉じこめられたりした時にはパニック発作を起こすことがあります。ただしこれは特定の状況に直面した時に起きる反応で、パニック障害でみられる「予期しない発作」ではありません。
予期不安
パニック発作を繰り返すことで、また発作を起こすのではないかと心配することを予期不安といいます。パニック発作は時間と共に治まりますが、一度治まった後もしばらく時間をあけて繰り返します。すると、パニック発作を起こしていないときであっても、また同じ発作が生じるのではないかという不安に駆られるようになります。
この他にも、いつ発作が起こるかという不安のあまり、仕事を辞めるなどの行動の変化が起きるようになるのもパニック障害の症状のひとつです。
広場恐怖
いつ生じるかわからない発作に備えて、助けを得られない状況などを避けようとすることを広場恐怖といいます。パニック発作を生じると、自分一人の力ではどうしようもなくなってしまい、誰かの助けを得たいと思うようになります。その結果、いつ生じるかわからない発作に備えて、助けを得られない状況や、発作から逃げられない状況を避けるようになってしまうのです。
うつ症状
上記の広場恐怖が強くなると仕事や日常生活ができなくなり、また引きこもりがちになるので友達との人間関係にも影響が出てきます。一人で外出できなくなるので、人に頼っている自分自身を情けなく思う気持ちも強まっていきます。広場恐怖をともなわないパニック障害もありますが、多くの場合広場恐怖がみられます。
その結果、生活の質が著しく損なわれてうつ症状がみられることがあります。
4.パニック障害の診断方法は?
パニック障害では、問診において症状を評価することから診断を下します。
また、激しい動悸や息苦しさといった症状は、パニック発作によるもののみではなく、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などの身体的な病気が原因で生じることがあります。パニック障害と身体的な病気を鑑定するために、血液検査、心電図、レントゲン写真、心エコーなどを行います。
5.パニック障害の治療法は?
パニック障害の治療は、薬物療法と精神療法的アプローチの認知行動療法が中心となります。
■薬物療法
薬物療法の目的には、「パニック発作を起きなくさせる」ことが第一目標で、次いで「予期不安や広場恐怖もできるだけ軽減させる」も目標になります。最初に使われる薬はSSRIをはじめとする抗うつ薬と、抗不安薬の一種であるベンゾジアゼピン系薬剤です。
これらの薬の効果は人によって違うため、効果を確認しながら増減したり薬を変更したりする必要があります。正しく効果を確認するためには、医師が定めたとおりの量と回数を守って服用してください。
パニック障害は薬物療法が効果を発揮しやすい障害です。ですので、「薬に頼らず気持ちだけで治す」というのは避けましょう。
■認知行動療法
認知行動療法は、パニック発作の治療として有用です。発作を恐れて広場恐怖を生じる状態を改善するために、これまで避けていた環境に自分自身の身を置くようにして、発作を起こすことなく行動できる範囲を徐々に広げていきます。
しかし、パニック発作の治療は簡単に完了できるものではありません。薬物療法と認知行動療法を両輪として、継続的に治療を行うことが重要です。
薬物療法を中止しても症状が再燃せず、問題なく日常生活を送れるようになることが最終的な目標です。
6.まとめ
誰にでも発症し得るパニック障害についてまとめました。
- パニック障害は、「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」を三大症状とする病気
- 決して稀ではなく、およそ100人に1人が発症する
- パニック障害は、神経質で繊細で、もともと不安や恐怖心が強い人、自分より他人を重視する人がなりやすい
- 原因は明らかではないが、危険な場面ではたらく神経機能が異常をきたすとパニック障害が生じるとされている
- パニック発作は、過労、睡眠不足、ストレス、風邪などがきっかけで発症する
- パニック障害では、問診において症状を評価することから診断を下す
- 治療においては、薬物療法と精神療法的アプローチの認知行動療法が中心
パニック障害は芸能人もなりやすかったりすることからメディアなどで取り上げられ、近年は認知度が上がり、そういう病気があることを理解されることも増えつつあります。
本当に辛いのに周囲から理解してもらえないことが、余計に本人を苦しめ、うつ症状が現れてしまったりもしますので、周囲の人がこの病気の大変さを理解してあげることが重要です。
家族など周囲の方は、本人がつらい思いをしていることを理解し、治療のサポートをしましょう。パニック障害は、治らない病気ではありませんので、焦らずにゆっくりと治療を続けてもらえればと思います。