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【発達障害の二次障害】うつ病や不安障害|二次障害への対策・対応

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ADHDやアスペルガー症候群などは、総称して発達障害と呼ばれています。発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違っているために、幼児のころからあらわれてくる先天的な障害で、これが一次障害です。

ところが、発達障害の人は、人にわかってもらえないようなストレスや不安を感じるために、これが起因となって統合失調症やうつ病などの精神疾患を併発することがあります。それが二次障害です。

本記事では、具体的な二次障害や二次障害にならないための対策、二次障害への対応についてご説明します。

 

1.発達障害の人がなぜ二次障害になるの?

発達障害の人の特性はそれぞれ異なりますが、最低限の日常生活はなんとか1人でこなすことができることから周囲には障害について理解されなかったり、「甘え」だと誤解されてしまうことが少なくありません。

発達障害の困難は少なからず健常の人にも起こりうる症状のため、世の中からは依然として厳しい視線で見られています。その結果、苦手だと分かっていながら周囲の期待に応えようとオーバーワークしてしまい、結果的に二次障害を発症してしまうこともあります。

少しずつ発達障害という言葉が世に認知されてきているとはいえ、実体として理解できている人はまだ少ないのが現実でしょう。発達障害患者で二次障害に発展することまだまだ減ることはないかもしれません。

 

2.発達障害とうつ病

うつ病の発症は発達障害の中でもADHDに多いと言われています。ADHDの特性上、本人に悪気はなくともつい遅刻してしまったり、忘れ物をしてしまうことが多発します。たとえ真面目な性格であっても目立つ行動面のみで評価をされてしまうことが多く、否定的な自己評価が積もった結果、こころとからだそれぞれにうつ症状が発症します。

 からだの症状

  • 極端な食欲の増減
  • 睡眠障害
  • 気だるさ、倦怠感

 こころの症状

  • あらゆることに対して無関心
  • 集中力・生産性の著しい低下
  • 新しいことに挑戦する意欲の低下

うつ病について詳しくはこちらをご覧ください:
うつ病とは?症状・原因・診断・治療法まとめ

発達障害と新型うつ病

うつ病といえば内因性うつ病のことを指し、それは時に妄想なども伴うため、二大精神病の一つとされていました。しかし、最近は妄想などは全く認められない、精神病的ではない「新型うつ病」(非定型うつ病と言われることもあります)が増加しています。

「新型うつ病」は、仕事の場面では、抑うつ気分、不安、焦燥、意欲低下などうつ病の症状が目立ちますが、仕事以外の場面では比較的症状が目立たないというものです。この場合、抗うつ薬の効果はあまり期待できません。効果が出ないからと、薬の量がどんどん増えてしまうことがありますが、副作用ばかり目立つようになり全く逆効果です。

「新型うつ病」は、実は発達障害の二次障害と考えられるケースが多いのです。発達障害の中でも自閉症スペクトラムの特性であるコミュニケーションの障害や社会性の障害、感覚過敏などにより仕事に適応できず、二次的にうつ状態に陥っていると考えられます。したがって、「新型うつ病」の場合は薬物療法は最小限にとどめ、認知行動療法的アプローチを行う方が効果が上がります。

発達障害の人のパートナーがうつ病になることも

ここまで記したのは発達障害者本人の話ですが、発達障害の男性と結婚した女性(逆パターンもあります)がうつ状態に陥ることもかなりの割合であります。

発達障害、特に自閉症スペクトラム障害の人はコミュニケーションの障害や強いこだわりなどが存在するため、共同生活を送っている妻もストレスが常に溜まる状況に追い込まれてしまうのです。夫に気持ちがうまく伝わらないことに悩み、夫が何かにこだわり頑として譲らないことに困惑している間に妻の方がうつ状態に陥ってしまいます。それをカサンドラ症候群と呼びます。その場合には、やはり抗うつ薬の効果は期待できず、夫の特性をよく理解することが、うつ状態から抜け出す第一歩であり、近道になります。

 

3.発達障害と双極性うつ病

発達障害の中でもADHDの人は双極性障害を発症しやすいことが分かっています。

双極性障害にはⅠ型とⅡ型があり、Ⅰ型は躁状態の際に多弁・多動となり夜も眠らず活動するため、双極性障害と診断はつきやすいのですが、Ⅱ型はⅠ型ほどではなく、「ちょっと元気すぎるよ」という程度なので躁状態が見過ごされてしまうことがよくあります。

その場合、病気の経過中にうつ状態しか目立たないため、うつ病と誤った診断が下され、抗うつ剤が投与されますがほとんど効果なく、治療抵抗性うつ病と判断されてしまうことになります。双極性うつ病の場合には抗うつ剤ではなく、気分調整剤や非定型抗精神病薬が有効なのでそこの見極めが大事です。

双極性障害について詳しくはこちらのページをご覧ください:
双極性障害(躁うつ病)とは?症状・原因・診断・治療法まとめ

 

4.発達障害と不安障害

発達障害の方は不安障害を合併する率がかなり高いです。

自閉症スペクトラム障害の人は、一般社会の中にいると、自分だけ異質と感じることがあり、不安な気持ちが溜まりに溜まって、不安障害を発症しやすいと考えられます。

またADHDの方も不安障害を発症しやすいと考えられます。発達障害にともなう不安障害の場合には、一般の不安障害とは原因が異なるため、抗不安薬の効果はあまり期待出来ません。

自閉症スペクトラムの場合には、うつ病の治療の場合と同様に、薬物療法は最小限にとどめて、あとは認知行動療法などを中心に治療を行った方がよいです。

 

5.発達障害と統合失調症

思考や感情や行動を一つの目的に沿って統合する能力が長期にわたって低下し、幻覚や妄想やまとまりのない奇異な行動がみられるのが統合失調症です。

統合失調症は、時期によって陽性症状と呼ばれる症状と陰性症状と呼ばれる症状があらわれます。発症時期にあらわれるのが陽性症状では、幻覚・幻聴、妄想、思考の混乱、異常な行動がみられるようになります。

幻覚と妄想は、統合失調症の代表的な症状です。その時期が過ぎると、陰性症状があらわれてきます。陰性症状では、感情や意欲の低下が見られます。

喜怒哀楽が乏しくなって、意欲や気力や集中力が低下します。一方で口数も少なくなり、思考力が低下して、会話がなりたたなくなってきます。さらに、他人とのコミュニケーションを避け、物事に無関心になり、ぼーとして一日を過ごし、引きこもり状態になっていきます。

双極性障害について詳しくはこちらのページをご覧ください:
統合失調症とは?原因・症状・診断・治療法まとめ

 

6.発達障害からの二次障害にならないための対策は?

まず理解が必要

対策をするためには、自分が発達障害であると気づき、そのことを受け入れることが重要です。実際、自分でも周りの人も気づかず、二次障害の精神疾患が発症したことで、診断してもらったら、実は発達障害だった、というケースも稀ではありません。

ですから、日ごろの行為の中に発達障害の気配を感じたら専門の医療機関に相談されることをおすすめします。発達障害であるとわかれば、自分の行為についての理解が深まり、むやみな自己否定をしなくなります。

教育の場では特性を理解してもらう

子どもが発達障害であることを教師が認識していない場合、発達障害の子に対してふさわしくない厳しめの指導が入ります。子供は、「やらない」のではなく「できない」にもかかわらず、教師が子どもにとって無理な注文をしているのです。

その結果、子どもの自己肯定感は薄れ、うつ病などの二次疾患を発症することになります。子どもの生活範囲の中で重要な役目を担っている人たちに、子どもの症状を告知し、理解してもらうことが重要な対策となります。

社会人でも環境調整が必要に

社会人になって、就職すると親や教師のサポートは望めなくなります。そのため、発達障害の人は、誰も自分を助けてくれる人のいない未知の荒野をさまよい歩くような不安感に襲われます。

職場に慣れろというのは、発達障害の人にとっては、ハードルの高い要求です。発達障害に理解のある職場、発達障害の従業員のために環境調整を用意してくれる職場を探すことを優先すべきでしょう。

「不得意」を「得意」に

発達障害の人は、学校や社会生活の場で、さまざまな「不得意科目」を抱えています。しかしそれは、「得意科目」がないわけではありません。

たとえば、アスペルガー症候群などを例にとると、コミュニケーションや臨機応変な仕事は苦手ですか、一つのことを集中してやることは得意です。

決して低くはない知能の中の得意科目が本人はもとより周囲に自覚されていない、あるいは見出されていないという面があるのです。本人や周囲がしっかりと理解してあげれば、「不得意」の悪影響を極力抑え、「得意」の部分をのばすこともできるのです。

 

7.発達障害の二次障害の症状が出た場合の対応

発達障害だけでも仕事・生活の上で困難があるのに、二次障害の症状があると本当に大変な思いをするかと思います。もし、発達障害が原因の二次障害があると思われる場合は、一人で悩まずに病院に相談に行き、症状に対して医師のサポートを受けられるようにしましょう。

発達障害のある人や発達障害を疑っている人も、精神的な辛さや不安定さを感じた場合、病院の精神科で医師に積極的に相談しましょう。

 

8.まとめ

発達障害の二次障害について、種類と対策をまとめました。

  • 発達障害の二次障害とは、発達障害の人が周囲ににわかってもらえないようなストレスや不安を感じるために、これが起因となって統合失調症やうつ病などの精神疾患を併発すること
  • 周囲の障害への認知、理解がないことが二次障害へとつながる
  • 二次障害には、うつ病や統合失調症、不安障害などがある
  • 二次障害の対策としては、まずは自分が障害を受け入れて理解し、周囲の理解も得ることが必要
  • 二次障害の症状がでたら、医師や専門家に相談すること

発達障害の二次障害は、あくまで一次障害を起因として発症した後天的な精神疾患です。ですから、まず、根本の一次障害に手を打って、その対策に取り組むのが本筋です。

そのためには、理解者を作ること、ストレスや不安を軽減する環境調整を行うこと、規則正しい生活を習慣づけること、そして医師や専門家に相談することが大切です。

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