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広汎性発達障害(PDD)とは?症状・特徴・診断・治療法まとめ

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広汎性(こうはんせい)発達障害(PDD)とは、社会性やコミュニケーション能力などの発達の遅れを特徴とする発達障害の総称で、アスペルガー症候群や自閉症などを含む発達障害の分類です。

では、広汎性発達障害の具体的な症状や特徴はどんなものがあるのでしょうか?

本記事では、広汎性発達障害の症状や特徴、診断方法や診断基準などを紹介します。

 

1.広汎性発達障害(PDD)とは?

広汎性発達障害(英名のPervasive Developmental Disordersを略してPDDとも呼ばれています)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および複雑な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。

このグループには自閉症」、「アスペルガー症候群のほか」、「レット障害」、「小児期崩壊性障害」、「特定不能の広汎性発達障害」という5つの障害が含まれています。それぞれの障害の特徴を持ちながらそれらの基準を満たさない場合には、「特定不能の広汎性発達障害」と診断され、全体の47%と半数近くを占めています。

原因は解明されていませんが、遺伝的要因と環境要因が複雑に影響し合って症状として現れるという説が主流となっています。また、子どもの頃には気づかずに大人になってから症状に気づく場合もあります。

 

2.広汎性発達障害の定義は?

発達障害情報・支援センターでは、広汎性発達障害は以下の通りに定義されています。

広汎性発達障害(PDD:pervasive developmental disorders)とは、自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害をふくむ総称です。

出典:各障害の定義|発達障害情報・支援センター

 

3.広汎性発達障害の主な3つの症状

広汎性発達障害の主な症状として

・社会性・対人関係の障害
・コミュニケーションや言葉の発達の遅れ
・こだわりや想像力の障害

があります。

また、広汎性発達障害のかなりの割合の人には「視覚」「聴覚」「味覚」「触覚」などの感覚に対して特定の刺激に苦痛や不快感を感じる「感覚過敏」という症状が見られます。

これは、感覚過敏を持っている人が必ず広汎性発達障害だというわけではないのですが、傾向として広汎性発達障害の人が感覚過敏を持っている確率が多いと言われています。

広汎性発達障害の中でも、特に自閉症やアスペルガー症候群がよく知られているかと思います。自閉症の多くが知的障害を伴うのに対して、アスペルガー症候群は言葉の遅れを伴わないので、「知的障害のない自閉症」と言われています。

 

4.広汎性発達障害の3つの症状別の特徴は?

広汎性発達障害の3つの症状の具体的な特徴について解説していきます。

社会性・対人関係の障害

広汎性発達障害の症状の一つ、「社会性・対人関係の障害」は4つの特徴に分かれます。

■孤立型
・周囲の人に対して興味がなく、関わるのを避ける
・呼んでも反応しない
・視線を合わせようとしない

■受動型
・人に言われたことに何でも従ってしまう
・嫌なことも受け入れてパニックを起こして固まってしまう
・自分から他人に関わることはしないが他人からの関わりは受け入れられる

■積極・奇異型
・積極的に人に関わろうとするが一方的に話し続けてしまう
・同じことを何度も言う
・相手との距離感が必要以上に近い

■尊大型
・人を見下したような言い方をする
・周囲に横柄な態度を取る
・自分の意思や主張を一方的に押し付けてしまう

以上の4つの特徴に分かれます。マイナーではありますが、他にも社会で適切に対応できる「適応型」などの特徴もあります。

コミュニケーションや言葉の発達の遅れ

「コミュニケーションや言葉の発達の遅れ」には、以下のような特徴が挙げられます。

  • オウム返しをしたり、単語しか発しないなど、言葉の発達の遅れが見られる
  • 一方的に話してしまったり、受け答えができないなど、会話が苦手な傾向がある
  • 言葉を文字通りに取ってしまい、冗談や皮肉が通じない
  • 「みんな」に自分が含まれていると気づけないなど、抽象的な言葉の意味や文脈の理解が困難

また、言語能力にも遅れがある場合は、絵などを使って具体的に説明しないと文章の意味が伝わらないことがあります。また、言葉の意味を理解せずに使って発言してしまうことがあり、相手を傷つけてしまうことがあります。

こだわりや想像力の障害

広汎性発達障害の人は、ある特定のモノに強い興味やこだわりを見せることがあります。

具体的な特徴としては、

・予定の変更や初めての場所などに苦痛を感じる
・食事へのこだわりが激しいなどの偏食
・パターン化していない自由時間などが苦手
・普段はできていることが場所が変わるとできない

などが挙げられます。

広汎性発達障害の人は強いこだわりを持っているので、環境の変化があったりいつものやり方に少しでも変化があると対応できなかったり、パニックを起こして泣き喚いたりする場合があります。

 

5.広汎性発達障害の年齢ごとの特徴

広汎性発達障害の症状は、成長過程と環境の変化によって年代ごとに変化していきます。では、その年代別に現れやすい広汎性発達障害の症状についてご紹介していきます。

幼児期(0歳~小学校就学)

広汎性発達障害は発達障害のひとつですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳幼児では、その特徴となる症状が分かりにくい場合がほとんどです。ですので、生後すぐに広汎性発達障害の診断がでることはありません。

しかし、幼児期全体を通してみると、以下のような特徴的な行動をとっていたことが多いと言われています。

■周囲にあまり興味を持たない傾向がある
視線を合わせようとしない子が多いです。また他の子どもに興味をもたなかったり、名前を呼んでも振り返らないことが多いです。障害がない子が興味をあるものを指でさして示すのに対し、広汎性発達障害の子は指さしをして興味を伝えることをしない傾向があります。

■コミュニケーションを取るのが苦手
知的障害を伴う広汎性発達障害の子は、言葉の遅れや、オウム返しなどの特徴がみられます。会話においては、一方的に言いたいことだけを言ってしまったり、質問に対してうまく答えられないなどの特徴があります。障害がない子が友達とごっこ遊びを好むのに対し、広汎性発達障害の子は集団での遊びにあまり興味を示さないことが多いです。

■強いこだわりを持つ
興味を持つことに対して、同じ質問を何度もすることが多いです。また、日常生活においても様々なこだわりを持つことが多いので、ものごとの手順が変わると混乱してしまうことが多いです。

児童期(小学校就学~卒業)

児童期には、主に小学校での集団生活や学習において、以下のような特徴が現れやすくなります。

■集団になじむのが難しい
年齢相応の友人関係がないことが多いです。周囲にあまり配慮せずに、自分が好きなことを好きなようにしてしまう子が多い傾向があります。人と関わるときは何かしてほしいことがあるときなだけのことが多く、基本1人遊びを好みます。人の気持ちや意図を汲み取ることを苦手とする子も多いです。

■臨機応変に対応するのが苦手
きちんと決められたルールを好む子が多いです。言われたことを場面に応じて対応させることが苦手な傾向にあります。

■言葉にすることが困難で、「どのように」「なぜ」といった説明が苦手
言葉をうまく扱えず、単語を覚えても意味を理解することが難しい場合があります。また、自分の気持ちや他人の気持ちを言葉にしたり、想像するのも苦手です。そのため、説明ができないこともあります。

思春期(小学校卒業~)

中学生以降の思春期では、以下の様な特徴が現れやすくなります。

■不自然な喋り方をする
抑揚がない、不自然な話し方をする子が多いです。これはアスペルガー症候群の子に多いと言われる特徴です。

■人の気持ちや感情を読み取るのが苦手
上記でも述べましたが、コミュニケーション能力が乏しく、人が何を考えているのかなどを考えるのも苦手な傾向にあります。

■雑談が苦手
目的の無い会話をするのを難しく感じる子が多いです。

■興味のあるものにはとことん没頭する
広汎性発達障害の子は上でも述べたように物事に強いこだわりをもっています。そのため、興味のあることにとことん没頭することが多いですし、その分野で大きな成果をあげられることもあります。

 

6.広汎性発達障害の診断基準

医療機関での広汎性発達障害の診断は、アメリカ精神医学会のDSM-5や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』による診断基準によって下されます。

医療機関での診断は、診断基準に基づいたテストや生育歴の問診、日常生活の中での困難についての質疑応答など、しっかりと話を聞いた上で、慎重に総合的に判断されます。広汎性発達障害の症状といっても幅広いので、個々のニーズにあった療育や支援、投薬が必要となってきます。

また、DSM-5では、ICD-10で広汎性発達障害の一つ"レット障害"を除いたすべての障害名が、自閉症スペクトラム障害という診断名に統合されました。

そのため、今後は広汎性発達障害の診断は徐々に少なくなっていくとみられています。

自閉症スペクトラム障害の診断基準に関してはこちらの記事をご覧ください:
自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?症状・特徴・診断・治療法まとめ

 

7.広汎性発達障害の診断方法

広汎性発達障害の診断は、専門機関・医療機関での総合的な検査が必要です。自分や子どもが広汎性発達障害かもしれないと気になる場合は、自己判断はさけて、専門機関で相談・検査をすることをおすすめします。

広汎性発達障害の場合は、見た目から判断しづらいこともあり、大人になるまで気づかないケースも多くあります。気づかない・診断を受けないまま過ごしてしまうと、様々な困難に直面することで自信をなくしたり、周りからいじめにあうなどということになり、辛い思いをする人も多くいます。

早めに障害を発見し、サポートや対策をしていくことで、その後の人生の困難を軽減することができます。また、うつ病や精神障害などの二次障害の予防にもなります。

診断を受ける前にまずは専門機関で相談を

医療機関での診断は、子どもの場合は、発達障害の専門外来がある小児科、脳神経小児科、児童精神科などで行われることが多いです。また、大人の場合は一般的に精神科や心療内科で診断がなされます。

いきなり専門医に行くのはハードルが高いと感じる方は、まずは地域にある身近な専門機関で相談すると良いでしょう。

子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。

【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
・発達障害者支援センター など

【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所 など

自宅の近くに相談機関がない場合には、電話で相談にも乗ってくれます。

 

8.まとめ

本記事では、広汎性発達障害がどういったものなのかを詳しくご説明しました。

  • 広汎性発達障害は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および複雑な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ
  • 広汎性発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害をふくむ総称のこと
  • 原因が解明されていないが、遺伝的要因と環境要因が複雑に影響し合って現れる説が主流
  • 主な3つの症状として、「社会性・対人関係の障害」「コミュニケーションや言葉の発達の遅れ」「こだわりや想像力の障害」
  • 広汎性発達障害のかなりの割合の人には「視覚」「聴覚」「味覚」「触覚」などの感覚に対して特定の刺激に苦痛や不快感を感じる「感覚過敏」という症状が見られる
  • 広汎性発達障害の症状は、成長過程と環境の変化によって年代ごとに変化していく
  • 医療機関での診断基準は、アメリカ精神医学会のDSM-5や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』
  • 広汎性発達障害の診断は、専門機関・医療機関での総合的な検査が必要

広汎性発達障害には、広汎というだけあって様々な症状があり、その症状には個人差があります。

早いうちに症状に気づき、療育や適切な教育を行っていくこと、周囲のサポートとともに個々にあった対策をしていくことで、逆に特性を強みとして活かすこともできます。

その人らしく生きていくためにも、早いうちからしっかりとサポート・対策をして、特性を活かせるような環境づくりしていきましょう。

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