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統合失調症とは?原因・症状・診断・治療法まとめ

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統合失調症は意外と頻度の高い病気で、およそ100人に1人ほどがかかるといわれています。また、思春期から40歳くらいまでに発病しやすいといわれています。

本記事では、決してまれな疾患ではなく、誰もがかかりうる統合失調症について詳しくご説明します。

 

1.統合失調症とは?

私たちは喜びや怒り、悲しみ、楽しみといったさまざまな感情をもっています。また、私たちは常に思考しています。感情や思考は、脳内の精神機能のネットワークを使って行われています。

ところが、何らかの原因でさまざまな情報や刺激に過敏になりすぎてしまうと、脳が対応できなくなってしまい、精神機能のネットワークがうまく働かなくなることがあります。そのため、感情や思考をまとめてあげることができなくなります。これは統合失調症の状態です。

その不調の場所によって、実在しない人の声が聞こえるなどの現実にないものをあると感じる幻覚が現れたり、周りで自分の悪口を言われていると思いこむ被害妄想が出たりなど、さまざまな症状が出現します。

統合失調症とは、こうした幻覚や妄想といった精神病症状や意欲・自発性の低下などの機能低下、認知機能低下などの症状が特徴的な精神疾患のことをいいます。主に思春期から40歳くらいにかけて発症し、男女比はだいたい1:1とされていますが、男性のほうが重症化しやすいことが指摘されています。

世界中のさまざまな地域でおよそ100人に1人ほどが発症すると考えられており、決してまれな疾患ではありません。

多くの精神疾患と同じように慢性の経過をたどりやすく、その間に幻覚や妄想が強くなる急性期が出現します。新しい薬の開発と心理社会的ケアの進歩により、初発患者のほぼ半数は、完全かつ長期的な回復を期待できます。

また、以前は「精神分裂病」が正式の病名でしたが、「統合失調症」へと名称変更されています。

 

2.統合失調症の原因は?

統合失調症の原因については明らかになっていませんが、遺伝的要因が強く影響することが指摘されています。

しかし、発症リスクを高める強い効果をもった遺伝子まではわかっていませんが、もともと統合失調症になりやすい素因が存在し、胎生期を含む人生早期の環境要因や、児童期・思春期のストレスなどをきっかけとして発症することと考えられています。

また、進学・就職・独立・結婚などの人生の進路における変化が、発症の契機となることも多いようです。 ただ、それらは発症のきっかけではあるだけで、原因ではないと考えられています。

 

3.統合失調症の症状

統合失調症の症状は多彩なため、全体を理解するのが難しいのですが、主に2種類に分けることが多いです。

  • 陽性症状:幻覚・妄想・自我障害など、本人が体験するもの
  • 陰性症状:意欲・自発性の低下や感情の表出の低下など、客観的に評価できるもの

これらに加えて、解体症状(考えや行動のまとまりがなくなる)と病識の障害(自分が病気であることを自覚できない)も重要です。記憶・学習などの認知機能障害も生じることが多く、就業などに影響を与えます。

陽性症状

妄想
「テレビで自分のことが話題になっている」「ずっと監視されている」など、実際にはないことを強く確信してしまいます。被害妄想や関係妄想(自分に関係ないことを関係あるように思うこと)にとらわれることもあります。その妄想の内容はあり得ないような内容であることがあります。

幻覚
周りに誰もいないのに命令する声や悪口が聞こえたり(幻聴)、ないはずのものが見えたり(幻視)して、それを現実的な感覚として知覚してしまいます。

思考障害
思考が混乱し、考え方に一貫性がなくなってしまいます。また、会話に脈絡がなくなり、何を話しているのかわからなくなることもあります。

陰性症状

感情の平板化(感情鈍麻)
意欲が湧かなかったり、喜怒哀楽などの生き生きとした感情表現が乏しくなり、他者の感情表現に共感することも少なくなります。友人づきあいをしなくなり、家に引きこもるようになったりします。

思考の貧困
会話で比喩などの抽象的な言い回しが使えなかったり、理解できなかったりします。

意欲の欠如
自発的に何かを行おうとする意欲がなくなってしまいます。また、いったん始めた行動を続けるということが困難になります。

自閉
自分の世界に閉じこもってしまい、他者とのコミュニケーションをとらなくなってしまいます。

 

4.統合失調症の診断方法は?

統合失調症を正確に診断する単一の検査は存在しません。本人が訴える妄想や幻覚などの陽性症状や陰性症状を詳細に評価しつつ、診断を行います。

また、統合失調症に類似した症状のある他の病気を除外することも大切です。類似した症状のある他の病気としては、てんかん、甲状腺機能障害、SLE、抗NMDA受容体抗体脳炎などが挙げられます。覚醒剤乱用も統合失調症に類似した症状が出ます。

統合失調症と、これら他疾患との鑑別を目的として、血液検査や尿検査、脳波検査、頭部CTや頭部MRI、髄液検査などを適宜行います。

 

5.統合失調症の治療法は?

統合失調症の治療では、薬物療法心理社会療法などが行われます。統合失調症は慢性的に経過することが多い疾患ですが、これらの治療により症状緩和を図り、通常の社会生活を送ることを目標とします。しかし実際は、統合失調症の方で正社員として就業できる方は少数です。

薬物療法

統合失調症の治療の中心となる薬を抗精神病薬といい、症状の改善や再発の予防効果があります。

抗精神病薬は、主として脳内で過剰に活動するドーパミン神経の活動を抑えることで症状を改善すると考えられています。抗精神病薬は、定型抗精神病薬(従来型)と非定型抗精神病薬(新規)とに分けられます。定型抗精神病薬は陽性症状に効果があり、非定型抗精神病薬は陽性症状に加えて陰性症状や認知機能障害に対する効果も期待できます。

抗精神病薬のほかに症状に合わせて、不安や抑うつを和らげる薬睡眠薬などが使われます。また、抗精神病薬の副作用を抑えるための薬が処方される場合もあります。

心理社会療法

薬物療法に加えて、認知行動療法や疾病教育などを組込みます。社会生活に戻るために、入院・外来においてレクリエーションやデイケアなどを通してリハビリテーションを行うこともあります。

デイケア
医療機関で実施される外来治療の一つで、SST や心理教育、レクリエーション、軽作業、料理などのさまざまな活動を通じて対人関係能力を改善し、社会にうまく参加できるように準備するプログラムです。

「症状は良くなったけれど社会に出る自信がない」「友達が欲しい」などの悩みがある場合は、デイケアに参加するとよいでしょう。定期的に通うことで規則正しい生活リズムも身につきます。デイケアは、保健所や精神保健福祉センターでも実施されています。

作業療法
作業療法士の指導のもと、手工芸、パソコン、体操、園芸、音楽、書道、スポーツなどの軽作業を通じて、楽しみや達成感、充実感といった感情の回復を図ります。

これにより、日常生活や社会生活戻るためのに必要な能力の回復・維持が期待できます。

SST(社会生活技能訓練)
SSTとはSocial Skills Trainingの略称で、対人関係を良好に維持する方法や、病気や薬との付き合い方、ストレスへの対処法などのスキルを学ぶことで自信を回復し、生活の質を向上させるためのトレーニングです。

日常生活の身近なテーマ、例えば「体調がすぐれないことを周囲の人に伝えるにはどうしたらいい?」のようなテーマを設定してロールプレイング形式で学んだりします。このトレーニングは、再発防止にも役立ちます。

心理教育
病気の症状や原因、治療法などについて正しい知識を学ぶことで、病気に対する理解を深め、病気との付き合い方や前向きに治療に取り組む姿勢を身につけることができます。

家族を対象にした心理教育は「家族教室」と呼ばれ、病気に対する理解と本人への接し方やサポート方法などを学びます。

 

統合失調症は慢性的に経過し、症状が再燃することもあります。そのため、状況に応じて治療を継続的に行っていくことが重要です。

 

6.まとめ

誰もがかかりうる統合失調症について詳しくまとめました。

  • 統合失調症は、幻覚や妄想といった精神病症状や意欲・自発性の低下などの機能低下、認知機能低下などを主症状とする精神疾患
  • 頻度の高い病気で、およそ100人に1人ほどがかかる病気
  • 統合失調症の原因については明らかになっておらず、遺伝的要因が強く影響すると考えられている
  • また胎生期を含む人生早期の環境要因や、児童期・思春期のストレスなどをきっかけとして発症すると考えられている
  • 統合失調症の症状は、陽性症状(幻覚、妄想、自我障害など、患者さんが体験するもの)と陰性症状(意欲・自発性の低下、感情の表出の低下など、ある程度客観的に評価できるもの)に大きく分けることができる
  • 統合失調症の診断は、本人が訴える妄想や幻覚などの陽性症状や陰性症状を詳細に評価しつつ行う
  • 統合失調症の治療では、薬物療法心理社会療法などを行う
  • 統合失調症は慢性的に経過し、症状が再燃しやすい

統合失調症は再発しやすい病気です。いったん症状が落ち着いても長期にわたって治療を続ける必要があります。

治療を中断して再発を繰り返すと、精神機能や社会的な機能が低下して今までできていたことができなくなってしまったり、薬が効きにくくなって回復に時間がかかるようになるといったようなリスクもあります。

もう大丈夫と思っても治療を続けて、再発を防ぎ続けることが大切です。病気や治療のこと、気になること、不安などがあれば、医師や専門のスタッフなどに相談するようにしましょう。

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