「子どもがアスペルガー症候群ではないかと指摘された」「子どもがもしかしたらアスペルガー症候群なんじゃないかと疑っている」。発達障害が広く認知されてきている現代では、このような悩みを持つ親もいると思います。
アスペルガー症候群(AS)は知的な遅れや言語の遅れがないため、判断が難しい障害です。しかし、早めに気づいて適切な対応・サポートをしてあげることで、子どもが抱えるストレスを軽減でき、生きやすい環境を作ってあげることができます。
本記事では、アスペルガー症候群の子どもに見られる症状や特徴、子どもへの関わり方などをご紹介します。
1.発達障害の一つ、アスペルガー症候群(AS)の子どもの症状・特徴は?
アスペルガー症候群(AS)の主な症状は大きく分けて3つあります。「コミュニケーションの障害」「対人関係(社会性)の障害」「限定された物事へのこだわり・興味」の3つです。子どもも大人も基本は変わりありません。
アスペルガー症候群の主な3つの症状
①コミュニケーションの障害
コミュニケーションの障害は、表面上は問題なく会話できるのですが、その会話の裏側や行間を読むことが苦手です。明確な言葉がないと理解がむずかしく、比喩表現などをそのままの意味で受け止めてしまう傾向があるため、人の言葉を勘違いしやすく、傷つきやすい面があります。
②対人関係(社会性)の障害
対人関係(社会性)の障害は、場の空気を読むことが苦手で、相手の気持ちを理解したり、相手の気持ちに寄り添った言動が苦手な傾向にあります。そのため、社会的なルールやその場の雰囲気を平気で無視をしたような言動になりがちで、対人関係を上手に築くことが難しいです。
③限定された物事へのこだわり・興味
限定された物事へのこだわり・興味は、いったん興味を持つと、周囲から見たら過剰といえるほど熱中します。法則性や規則性のあるものを好み、異常なほどのこだわりを見せることがあります。その法則や規則が崩れてしまうことを極端に嫌う傾向があります。一方、この特性は逆に強みとして活かすこともできます。
症状・特徴について詳しくはこちらをご覧ください:
アスペルガー症候群(AS)とは?症状・特徴・診断・治療方法まとめ
2.子どものアスペルガー症候群の診断基準と薬物療法
アスペルガー症候群の診断基準
まず、アスペルガー症候群の医療機関での診断基準は、アメリカ精神医学会の『DSM-5』や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』によるものです。そして、診断基準に基づいたテスト、その人のライフスタイルや困難についての質疑応答など、しっかりと話を聞いた上で総合的に判断されます。
アスペルガー症候群の診断を受けられる医療機関としては、小児科・児童精神科・小児神経科や発達外来などで受診することができます。
詳しくはこちらのページをご覧ください:
アスペルガー症候群の診断基準や検査内容は?
アスペルガー症候群の薬物療法
アスペルガー症候群は病気ではないので、基本的にその子にあった支援によって改善を目指します。しかし、次のようなときは薬物療法が必要な場合もあります。
- イライラし興奮しやすい。自傷行為や家族への暴力がある。
- 食欲不振や不眠があり、うつ状態が疑われる。
- 被害妄想や幻覚がある。
- こだわりが強く、日常生活に支障が出ている。
- 不注意、多動性、衝動性など、ADHDの症状も強く出ている。
- 不安障害、強迫性障害などの合併症がある。
このような場合は、症状に応じて、抗うつ薬や気分安定剤などの薬物療法が必要となります。必ず医師の指示に従って服用させてください。
3.アスペルガー症候群の子どもに対する接し方・子育てポイント
アスペルガー症候群の子どもとどのように関わっていくとよいのか、伝え方のポイントや学校での対応などについてご紹介しますが、これはすべての子どもに当てはまるわけではありません。あくまでも参考程度にお考えください。
よくある行動への対応方法
アスペルガー症候群の子どもによくある行動に対して、どのように対応すべきなのかいくつかご説明します。
- 一方的に話し続ける:「次はお母さんが話す番です」「話を聞いてください」など、はっきりと指示をする
- 場の空気を掴むのが難しい:「こういうときはこうします」というように、パターン化して教える
- 何度も同じ間違いを繰り返す:冷静に繰り返し教える
- パニック状態に陥る:1人になれる場所に連れていき、落ち着くのを待つ
- 体を触られることを嫌がる:触る前に声をかけ、こちらに注意を向ける
特徴を理解することが大切
アスペルガー症候群の子どもと関わる上で、最も大切なのは特徴を理解すること。
アスペルガー症候群は、本人の努力が足りないと勘違いされがちで、周囲の理解を得られないままだと、そういった誤解を受けることも多く、本人は生きづらさを感じることが多いでしょう。
周囲の理解やサポートが十分でないことによって、不登校や引きこもりなどの二次障害となるケースも少なくありません。そういった二次障害を引き起こさないためにも、周囲がその特徴を理解してあげることが大切です。
ほめ方・伝え方のポイント
アスペルガー症候群の子どもをほめるときや何かを伝えるときのポイントです。
- 一つずつ指示をする
- 書いて伝える
- 具体的に伝える
- 短く指示をする
- イラストや写真を一緒に見せる
- 否定的な言葉を使わない
- 前もって予定を伝える(見通しを持たせる)
- よいことをしたときは思いきりほめる
- 結果より過程を認めてほめる
学校での対応方法、協力関係について
学校は勉強、学びの場ですが、アスペルガー症候群の子どもは、勉強の得意不得意の差が通常よりも激しく出ます。そのため、学校でもその子に合わせた学習方法ですすめてあげることが大切です。
また、本人が勉強しやすい環境というものを作るために、担任の先生以外にもできれば補助の先生がついていると安心でしょう。
必要に応じて、特別支援学級での対応も検討してみてください。アスペルガー症候群の子どもが学校生活を送りやすい環境を作り出すためには、学校との協力関係をしっかりと結んでおくことが必要です。
4.まとめ
アスペルガー症候群(AS)の子どもに見られる症状や特徴、子どもへの関わり方などを本記事ではまとめました。
- アスペルガー症候群の主な症状は大きく分けて3つあります。「コミュニケーションの障害」「対人関係(社会性)の障害」「限定された物事へのこだわり・興味」の3つ
- アスペルガー症候群の医療機関での診断基準は、アメリカ精神医学会の『DSM-5』や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』によるもの
- 診断を受けられる医療機関としては、小児科・児童精神科・小児神経科や発達外来など
- アスペルガー症候群の子どもによくある行動にしっかりと向き合って対応すること
- アスペルガー症候群の子どもと関わる上で、最も大切なのは特徴を理解すること
- 褒め方や物事の伝え方にもポイントがある
- アスペルガー症候群の子どもが学校生活を送りやすい環境を作り出すためには、学校との協力関係をしっかりと結んでおくことが必要
いかがでしたでしょうか。最初にも述べましたが、アスペルガー症候群というのは判断が難しい障害です。周囲からは、理解もされにくく、誤解されてしまいがちです。しかし、家族や周囲がその特性をしっかりと理解することで、本人のストレスを大幅に減らすことができます。
ぜひ本記事でお伝えしたことを参考にしてみてください。